体幹の安定は、運動をする人だけではなく、日常生活においても、重い物を持つときや力を発揮するときに非常に重要な要素です。
身体の構造を見ると、肋骨と骨盤の間のお腹は骨で守られていません。そのため、体幹を安定させるには、このお腹周りの強さ”腹圧”がかかることが必要だと言われます。
力を入れるときに、一瞬息を止めるようにしてお腹を固くしているのが腹圧の良い例です。
しかし、腹圧は体幹の安定に必要な要素ですが、腹圧を高めようとして腹筋を鍛えたりしても、腰への負担が大きくなります。
今回は、身体に負担をかけずに、体幹を安定させる方法について一緒に考えていきましょう。
腹圧の高め方には注意が必要
さて、先ほど腹圧を高めるというキーワードが出てきました。腹圧に関係している筋肉は、横隔膜、大腰筋、腹横筋、骨盤底筋など体幹の奥にある筋肉です。
これらの身体のインナーマッスルを鍛えるために、腹圧を高めるためのトレーニングとして、ドローインなどが有名です。
ドローインは、呼吸をしながらお腹を凹ませるトレーニングです。このドローインは、横隔膜と骨盤底筋を連動させて、体幹を安定した状態に働きやすくします。しかし、お腹を凹ませるやり方も慣れていない人がやると横隔膜の動きではなく、腹直筋などアウターマッスルを使った力んだ凹まし方になってしまいます。

さらに、このドローインを行い腹圧を高めたとしても、体幹と四肢がつなげて使うことができなければ、以前より強い負荷に耐えれるだけで、負担がかかるのは変わらないのです。
身体への負担を減らすためには、腹圧を高める方法だけではなく、腕や脚を体幹と連動させる必要があるのです。
股関節を使うことが身体の負担を減らす
重い物を持つときに、腰などに負担がかかってしまう人の多くは、腰と膝を中心に動いています。
腰や膝は骨の構造的にもそれほど強くないため、腹圧がいくら高まっても限界が少し上がる程度です。
そして、腰と膝を中心に動いてしまう人が共通して使えていないポイントが、股関節にあります。
股関節は3つの強固な靭帯によって、非常に強い関節構造をしています。腰と膝の負担を軽減させるためには、股関節を使って動けるかが重要なポイントになるのです。

さらに、股関節の動きを助けるために、脇を効かせることも重要になります。なぜなら、脇の下にある前鋸筋という筋肉から外腹斜筋を通って、逆側の腹横筋、内腹斜筋が連動して働きます。

脇が使えることで骨盤が安定し、股関節が動かしやすい状態になるためです。
試しに、椅子などの少し重さのあるものを2つの方法で持ち上げてみましょう。
①:膝・腰中心の持ち上げ方
- 片足を前に出して脚を前後に開き、膝を足首より前に出す。
- 腰を落として椅子を両手で持つ。
- そのまま椅子を持ち上げる。
股関節中心の動き方をするために、2つのワークを試してみてください。
股関節スクワット
- 鼠蹊部の真ん中の部分を手で押さえる。
(先ほどやった股関節の位置をより意識しましょう) - 爪先と膝をすべて身体の正面に向いていることを確認する。
- 確認ができたら、膝の位置を変えずに、鼠蹊部を引き込みお尻を後ろに突き出す。
- もも裏の張りを感じたら、元の位置に鼠蹊部を押し出すことで戻ってくる。
- 1〜4を5回繰り返す。
脇のクロスポイント
- 右側の体幹と腕のつなぎ目を左手で掴み、肘を下に向かって押し付けるように3回脇を締める。
- 同じポイントを押さえながら、肘の先で大きく円を描くようにして、5回ほど回す。
- 逆の腕で、1〜2を行う。
上の2つのワークが終わったら、股関節と脇が使いやすい状態になります。
その状態で股関節を中心に身体を使ってみましょう。
②:股関節中心の持ち上げ方
- 片足を前に出して脚を前後に開き、膝を足首より手前にする。
- 椅子を両手で持つ。
- 肩と耳を遠ざけるようにして脇を締めて、みぞおち(へそから指4本上あたり)を丸めたまま、椅子を持ち上げる。
股関節を中心にして動くと、椅子が楽に持ち上げれたはずです。
なぜなら、これは一つの関節にかかる負担を減らすことができたからです。
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金田翔吾
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