よくトレーニングやリハビリで、体幹を安定させようとお尻を鍛える方が多くいます。
確かにお尻は体幹を支えるために重要な筋肉ではあります。
しかし、少しやり方を間違えると腰を痛めることにもつながります。
一体どういうことか一緒に見ていきましょう。
お尻の筋肉ばかり鍛えると体幹は不安定になる
お尻のトレーニングやリハビリで鍛えられるのが、お尻の外側に付いている中殿筋という筋肉です。

この筋肉はお尻の表面に位置するいわゆるアウターマッスルで、股関節を外に開いたり、バランスを取るときに働く役割を持っています。
そして、中殿筋と相対する役割を持っているのが、股関節に付いている体幹のインナーマッスル(大腰筋)です。インナーマッスルはアウターマッスルに比べて身体の深くにあります。

大腰筋は大腿骨を骨盤に引きつけた状態で股関節を安定させるという役割を持っています。(これをジョイントセントレーションと言います。)
ですので、中殿筋を鍛える前に大腰筋が働いている状態でないと股関節の安定性が得られず、アウターマッスルで無理やり股関節を安定させようとします。
その内の一つが、中殿筋なのです。
先程、脚を外へ開くときに中殿筋は働くと言いましたが、大腰筋の働きが弱いと脚を外へ開く動きと安定をさせるという2つのことを同時におこなわなくてはいけません。
股関節が安定している状態であれば、中殿筋は無理なく伸び縮みしますが、このような状態になってしまうと、常に力が入ったような状態となり、固くなってしまいます。
この状態で中殿筋を鍛えると、固くなっているところへ、さらに中殿筋の力を要求するので、ますます股関節周りが固まってしまうのです。
すると、股関節だけでなく、腰や骨盤の動きを悪くし、それをかばうような動き方になってしまうので、痛みが出たり、体幹が不安定な状態となる原因になるのです。
体幹を安定させる股関節の支点
では、どうすれば怪我のリスクなくお尻を鍛え、体幹を安定させることができるのでしょうか。
怪我のリスクなく体幹を安定させるためには、やはり股関節が重要になってきます。
中殿筋が固まっている状態は、股関節の運動の支点が外側へ偏っていて、スムーズに動いていない状態です。
ですので、股関節の中心を支点にすることで、股関節に偏りなく、大腰筋が働きやすい状態で運動できるようにしていくことが重要です。
大腰筋が働いていればお尻をトレーニングしても中殿筋の余計な働きがない状態で鍛えることができます。
中殿筋を固めることなくお尻を鍛えて体幹を強くするには、以下の2点がポイントとなります。
・大腰筋が働いている。
・股関節の中心を支点とした運動ができる。
股関節の中心を支点に切り替えるために以下の運動を試してみてください。
1.肩幅に足を開いて立つ。
2.そけい部を軽くさわる。
3.そけい部を支点に体を前へ倒し、お尻を後ろへ突き出す。
4.元の姿勢に戻る。
5.3〜4を5回繰り返す。
<ポイント>
・膝が内くるぶしより前に出ない。
・膝が伸びきらない。
・腰を反りすぎない。
運動の前後でお尻の外側の中殿筋の固さをチェックしてみてください。
痛みがあるならそれも合わせてチェックするといいでしょう。
運動前より固さは柔らかくなり、痛みも和らいでいるはずです。
これは股関節の運動によって、支点が外から股関節の中心に切り替わり、大腰筋が働いて中殿筋の緊張がなくなったからです。
この状態で股関節の中心を意識しつつお尻のトレーニングをすることで、より効果的に体幹を安定させることができるようになります。
正月明けで身体を動かしたい方や、トレーニングをする方はぜひ、トレーニング前にやってみてください。
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ヘッドトレーナー
<保有資格>
JCMA認定体軸セラピスト
JCMA認定ヨガセラピスト
RYT200
NASM-PES
NSCA-CPT
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